企業オーナーやその事業承継者にお勧めしたい、昨年4月に施行された相続税・贈与税の納税猶予制度(経営承継円滑化法)について整理させていただきます。

解説をしているWebサイトも多いのですが、専門的で難しいので当職が端的にお知らせします。

 

この新制度は事業承継対策・相続対策にとても有効なのですが、その有利なポイントは以下の4つです。

 

  1. (上手くやれば)自社株に対する相続税・贈与税を支払わなくてよくなります!
  2. 事業承継対策の金融支援として、低利融資や経営者の個人保証の解除に関する方法が充実しました。
  3. 後継者に向けて事業承継補助金が新設されました。
  4. メリットを受けるには「特例承継計画」を平成35年(西暦2023年)3月31日までに提出して承認される必用があります。

 

 

もちろん、最大メリットは相続税対策ですが、「上手くやらなければならない」というのはポイントで新しい融資や経営者の個人保証、補助金も同じです。制度活用にはいろいろと知恵が必要です。

特例承継計画は、行政から認定を受けた支援機関(認定経営革新等支援機関)の助言・指導が必要で、顧問税理士が認定を受けていない場合には作れません。

 

背景から説明すると、相続税の基礎控除が5000万円から3000万円になった際に、都心部でちょっとした自宅を所有している人にまで課税ベースが広がったとメディアで騒がれたのですが、法人オーナーにとっては小さな会社でも後継者が相続税を支払わなくてはならない状況になっています。しかし、統計によれば、中小企業の経営者の平均年齢は66歳に達しているのに、相続対策を立てている企業は全体の12.4%と聞いています。

(帝国データBK2015年、日本政策金融公庫2016年分析データ)

 

そうした状況を受けて、国も事業承継税制として一定の要件を満たせば自社株に対する相続税課税をしない制度を整えたのですが、その「一定の要件」が厳しくて経営の実情に沿っていないので利用が進みませんでした

確か、事業承継税制の利用者は、全国に100万社の対象企業があると言われている中で、一昨年の時点で全国で2000件くらいだったと思います。(記憶が定かでないのですが・・)

 

そこで実務家からの問題点の指摘を受けて昨年4月に要件を大幅に緩和してきました。

 

もっとも大きい緩和は納税猶予額です。

以前の制度では最大で50%程度の納税猶予しか認められませんでしたが、なんと太っ腹にも納税猶予割合が100%に拡大されています。

これは、自社株に対する相続税や贈与税をまったく払わなくていいというわけで、目ざとい情報通の企業オーナーや後継者は真っ先に利用を検討している訳です。

 

できるなら、やらなきゃ損。

 

また、以前の事業承継税制には利用に大きなリスクがありました。

 

具体的には以前は承継時の時価に基づいて課税額が確定して猶予され、猶予要件を満たさなくなるとその額が後々になって取り立てられるという悪魔のような制度でした。

例え、将来的に業績不振や事情があって会社が傾いて自社株の価値が落ちても減額されませんから、とてもリスクが大きくて進められるようなものではありませんでした。

更に、納税を次世代に繰り延べるための猶予要件には雇用要件という厄介なルールがあって、承継前の雇用の8割を維持しないと納税猶予が打ち切りになり、突然課税されることになるという大きな経営リスクがありました

こんなのじゃ、利用が進むわけがありません。

 

しかし、改正後のルールでは雇用要件が未達の場合でもきちんと理由を書いた書類を出せば猶予が維持され、もしも納税猶予が打ち切りでもその時点の評価額で納税額が再計算されます。

この雇用要件という厳しい猶予要件については、計画策定を支援した認定支援機関が理由書を提出すればいいということなので、実質的に骨抜き(撤廃)です。

 

もちろん、自社株の相続税や贈与税を払わなくていいという劇薬ともいえる税制なので、行政側からの縛りもあります。

端的に言えば、事業承継に際しては、税理士や会計士等で行政から免許を受けた認定支援機関の経営診断を受けて見張ってもらうというもので、「特例承継計画」という事業計画を策定して承認を受けなければなりません

特別に準備された時限的な制度なので、期間は平成35年(2023年3月末)までです。

 

これが、認定を受けている私の仕事ですが、事業承継を巡るスキームの一つとしてもちろん活用させていただいています。

納税猶予の他にも、こちらの政策パッケージには金融支援(経営者保証や新規融資)、補助金もありますので、顧問先以外の対応は有料相談になりますがお気軽にお問合せください。

 

お問合せはこちら

CONTACT