ユニークスではお客様から非公開会社の株価算定の依頼を受けることが多くあります。

 

 

ここまで、当事務所での株価算定の3大ニーズは、

 

1.相続や親族内の事業承継対策のために行う財産評価のため

2.上場会社やIPO準備企業がM&Aや組織再編時の買い手の際に売買価格分析のため

3.投資契約や法律上の理由から株式の買取を請求する際の根拠として

 

このような順番だと思うのですが「1.財産評価」とそれ以外では大きく株価の算定手法が異なります

 

相続や親族内の事業承継(贈与)の際に算定する株価は、国税庁が定める財産評価基本通達というルールに沿って、会社の決算書の数値を当てはめることで計算できるもので大変簡単なものです。

これは、課税の公平性を保つために形式的な基準が設けられているもので、金融機関の無料株価評価や会計事務所が行っている自社株価評価は「相続税評価額」のことです。

 

相続税の計算をするときのほか、親族内で贈与するような際には、この相続税評価額で計算して置けば税務上はOKです。

ただ、この相続税評価額には重大な問題があって、具体的な計算ロジックは省略しますが、理論的に第三者間の売買で成立するだろうと思われる時価よりもかなり安く評価されます。

そうすると、この相続税評価額を相続や親族内の事業承継対策以外に用いて取引を行うと、売り手が損をして書い手が得をしてしまう訳です。

 

こんなことがありました。

 

先日、当事務所のクライアントから、あるベンチャー企業の投資契約書を事前に見て欲しいという相談があったのですが、

投資契約を見たところ、経営側が契約違反をして株式を買い戻す義務がある条項の買取価格として、この相続税評価額が実質指定されていました

 

創業期にたっぷりと赤字を掘り無配当になるベンチャー企業の場合は、相続税評価額は限りなくゼロです。

つまり、このケースでは気付かずに投資契約をしていたら、開示する経営数値を改ざんするなど酷い契約違反があったとしても、対価ゼロ円で株を買い取られてしまうという無茶苦茶な契約でした。

 

とてもふざけた投資契約ですが、実はこの「ちょろまかし」を僕は今年2回、別の投資家クライアントの持ち込んだ投資契約で発見しました。

どうも起業家側に一方的に有利なように仕組んだと思われる投資契約の見本のようなものが相当程度、出回っているようですね。。。

 

VCの世界も生き馬の目を抜くものですから仕方ありません。リスクが顕在化してしまったとしても、気付かない方も悪いといえます。

 

さて、株式の買取請求をするようなケースでは理論的に第三者間の売買で成立するだろうと思われる時価である「第三者取引価格」を分析して交渉することになります。

この作業は、会計事務所のValuation(バリュエーション)という専門サービスです。

 

 

相続税評価額は公平ですから基本的には誰が行っても変わらないのですが、Valuationは実施者によって幅がでるものです。

例えば、1株=1万円~1.2万円(中央値は1.1万円)、といった風にレンジ幅で分析されます。

 

なぜレンジ算定になり、かつ、実施者によって算定結果に幅が出るのかと言えば、まずは手法が複数あり経済実態の解釈に基づいて選択する必要があるからです。

DCF法、マルチプル法、時価純資産法というのが代表的な評価手法でそれぞれ理論背景が異なりますが、簡単に説明できないのでここでは割愛します。

また、それぞれの算定手法の計算途中においても、類似業者の選択や指標、割引率で用いる統計データの参照元、決算書の修正に関する考え方など、多くの変数があります。

 

例え、価格交渉が不調に終わって泥沼化して裁判になっても負けない高水準で信頼される統計値を利用し、理論的にも判例的にも正しいレンジにもってきつつ、クライアントの正当な利益機会をサポートする必要があります。微妙なバランス感覚です。

 

また、交渉相手の買い手から出た株価算定をレビューして、修正報告書を出すというカウンターパートの業務も請け負います。

 

Valuationで提出される「株式価値評価算定書 (by 公認会計士)」は、第三者である専門家が鑑定評価した価格として一定の証拠力があります

理由があって、同族間の株式譲渡を相続税評価額よりも高く行う際などに税務上も証拠として主張できるわけです。

 

上場されていない非公開企業ないし中小企業の株価は複数あるというリスクについてのお話でした。

Valuationですが、横浜市内の独立した公認会計士では私がいちばん経験が多いんじゃないですかね。

 

 

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